オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

2009年にGYOBUとコラボして自費出版した「福岡県の水生昆虫図鑑」ですが、今年の3月に同定ミスを告白した報文を発表し、一応これで間違いはすべて吐き出したはずです。ということで正誤はここ(リンク)にまとめてありますが、PDF版正誤表も作りましたのでご利用下さい(PDF)。
なぜこんなにミスを連発したのか?それぞれ異なるものの、その原因はいずれもはっきりしております。次回同様の企画があった場合にはその反省を踏まえて同様のミスは二度と繰り返すまいと誓うばかりであります。それにしても同定ミスは恥ずかしいですね。モロに実力不足をさらすわけですから。この2件が発覚した際には悶悶として夜も眠れぬ日々でした。修正報文は出すべきところにきちんと出したので、お許しいただけると幸いであります。とにかく重要なのは以下の2件です。泣きたい。泣いていても仕方がないので、何故こんな初歩的なミスをしたのか、を本日はつづりたいと思います。

「シジミガムシではなくてミユキシジミガムシだった件」
本を作成していた段階では1雄しか得られておりませんでした。さっそく交尾器を抜いて愛知県産のミユキシジミガムシの雄交尾器と比較したところ、中央片先端のトゲが愛知県産のものははっきりしていて、福岡県産のものは見えなかったので、シジミガムシとしたものです。ところが本の出版後に同所で複数の雄個体が採集できたので、改めて交尾器を見るとそのトゲが明瞭に見えるではありませんか!動揺しつつ前の個体を見直すとやはり見えません。ところが水でふやかして台紙から外してグルグルまわしていると、角度によってトゲが見える・・。どうやら交尾器を抜く時に破損してしまい、その結果先端が巻き込んでねじれるような形になっており、先端と思っていたところは本当の先端ではなく、巻き込んだ先が本当の先端でそこにトゲがあったというオチでした。実は交尾器にはトゲ以外にも種の特徴を現す形質はあったわけで、そういうところも確認せず、さらに技術的なヘボさが追い討ちをかけるという最低の展開でした。正式な記録は以下でフォローしています↓
中島 淳・井上大輔(2009)福岡県におけるミユキシジミガムシの採集記録とシジミガムシ記録の訂正.甲虫ニュース 167: 22.

「チビマルケシゲンゴロウではなくてヤギマルケシゲンゴロウだった件」
某池で共著者により採集されて、画像がメールにて送られてきて、それを見てああチビマルケシですかね、と私が答え、その後標本を確認しようと思ったのにせずにそのまま印刷まで行ってしまったのが原因です(えー)。この理由として熊本県からすでにチビマルケシの記録があったことと、九州からヤギマルケシの記録がなかったこと、の2点があるのですが、近畿地方と南西諸島に分布している本種が九州にいないはずはないわけで、なぜきちんと現物で確認しなかったのか、当時の自分を問い詰めたい気持ちでいっぱいです。ちなみに源五郎さんから「これヤギマルケシじゃないですか」というご指摘があり発覚したのですが、なるほど、区別点を教わると生体画像からでもかなりの確かさでこの2種は同定可能です。正式な記録は以下でフォローしています↓
中島 淳・井上大輔(2012)福岡県におけるヤギマルケシゲンゴロウの採集記録.ホシザキグリーン財団研究報告,15:182.
以上、福岡県の水生昆虫図鑑の修正と過ちの顛末でした。改めて書き出すと泣きたい気持ちで一杯になります。専門家として本を書いているのにこんなにいい加減なんてどうかしてる!などというしごく真っ当な指摘はご遠慮下さい。本当に、反省しています。