オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

ナーフー(その4)

Yamamoto, G., Takada, M., Iguchi, K., Nishida, M. (2010) Genetic constitution and phylogenetic relationships of Japanese crucian carps (Carassius). Ichthyological Research, 57: 215-222.
その3の続きです。国内的には6分類群として認識されているフナですが、見た目で区別が可能とされるそれら6分類群を遺伝子で調べるとどうなるのか、というフナ界理解の上で非常に重要な論文です。
日本からゲンゴロウブナ、ナガブナ、キンブナ、ニゴロブナ、オオキンブナ、3倍体ギンブナ、2倍体ギンブナの6分類群+1異核型、そして海外のC. a. auratus(長江産)、C. a. gibelio(アムール川産)を用いて、ミトコンドリアDNA調節領域の部分塩基配列と核DNAのAFLP法の2つの観点からそれぞれの遺伝的関係を調べています。
結果としてまず、調節領域の塩基配列からはA、B、C、D-I、D-II、D-IIIの5群として整理できることを示しています。Aはゲンゴロウブナ、Bは長江産C. a. auratus+3倍体ギンブナ+2倍体ギンブナ、Cはアムール川産C. a. gibelio、D-Iは3倍体ギンブナ+キンブナ、D-IIは3倍体ギンブナ+2倍体ギンブナ+オオキンブナ、D-IIIは3倍体ギンブナ+2倍体ギンブナ+ニゴロブナ+ナガブナ+オオキンブナ+キンブナ、となっています。
一方、AFLP法ではゲンゴロウブナ、キンブナ、3倍体ギンブナ、C. a. gibelio(アムール川産)、3倍体ギンブナ+オオキンブナ、3倍体ギンブナ+キンブナ、ニゴロブナ+ナガブナ+オオキンブナ、となっています。
結果から明らかなように、ゲンゴロウブナC. cuvieriとC. auratus(と著者らがまとめている他の日本産全フナ)の2系統は完全に区別できました。したがってこれらは明瞭に別種であることがわかります。そして、その他の日本産フナ(3倍体ギンブナ、2倍体ギンブナ、ニゴロブナ、ナガブナ、キンブナ、オオキンブナ)は遺伝的には明瞭に区別できないことがわかりました。
むむー、なんと見た目で区別されていた日本産フナ類はゲンゴロウブナを除くとすべて一緒なのではないか?ということになってしまいました。さらに次の論文を読んでみたいと思います(その5へ)。