仕事納めでした。あんまりおさまっていませんが、やむを得ません。今年出会った湿地帯生物で一番感動した種を紹介します。
奄美大島の固有種・アマミハバビロドロムシDryopomorphus amamiです。水質が良好な河川に生息し、上流から中流まで広く採集例がありますがとにかく採れません。昨年の秋に行った採集では完全に外し、改めてこの4月に採集にいってなんとか出会うことができました。それでもたった4頭です。しかしまあその採れた時の感動というか興奮というか、久々に良いものでした。
体表面に細かい毛がたくさん生えており、水中ではこの毛によってトラップされた空気の膜が全身を包みます。銀色の空気スーツをまとったアマミハバビロムシは大変美しいです。
採集は難しくなかなか出会えませんが、希少種かどうかは微妙なところです。本種が生息する奄美大島の河川環境は全体的に大変良好で、昆虫であるところの本種の個体数は潜在的には相当数がいるはずです。したがって、人に出会い難い何か秘密の生態をもっているのでしょう。この先も本種が生息する奄美大島の河川環境が大きく改変される可能性は低く、そのため本種もこの先しばらくずっと生き続けることができるでしょう。その点は本当に安心です。しかし気づかないうちにいなくなっていた、なんてことにならないようにある程度は生態に関する研究も進めていく必要があるかもしれません。
今年も貴重な湿地帯生物が生息する貴重な湿地帯は次々と失われてしまいました。今も各地で失われつつあります。生物多様性保全の重要性は認知されつつありますが、手遅れになるのではないかと危惧しています。それでも守るべき生物と美しい自然環境はまだまだ国内に多く残っています。来年もあきらめずに生物多様性の保全にかかわって行ければと思っています。あわせて時折はこのような南の島に逃避して、かっこいい湿地帯生物と触れ合って、心の洗濯をしてきたいと思います。