「八郎潟・八郎湖の魚 干拓から60年、何が起きたのか」杉山秀樹(著)、秋田魁新報社(リンク)
秋田県で長く淡水魚類を中心に地道な研究をされてきた杉山秀樹博士による渾身の著作です。コンパクトではありますが、前半の図鑑編、後半の文化編と情報量が多く非常に勉強になりました。
図鑑編ではいわゆる淡水魚類の他に、周縁性淡水魚類というか海水魚でありながらかつての八郎潟あるいは現在の八郎湖にしばしば入ってくる種類の掲載種数が多く、当地の魚類相を考える上でも非常に参考になります。
後半の文化編では、ドジョウ食文化も少し載っていましたが、コイやウナギに関すること、多様なフナ&ワカサギの食文化、それからかつて大量に漁獲したボラ供養のための「鯔塚」の話など、初めて知る内容が多く興味深いです。
かつて日本列島第2位の湖沼として君臨し、大量かつ多様な魚類の生息場となっていた八郎潟、そしてその周囲にあった文化。そんな八郎潟を干拓した結果、失ったものは何であったのかということがよくわかります。おすすめです。
干拓や埋め立て、確かに得られるものはありますが、長い年月を見たときに得たものと失ったもののバランスがとれていたのか、今後はきちんと検証していかないといけないでしょう。そして戻せるものは戻せるうちに戻す、という判断ができるものもあると思うのです。今後そうした国になっていって欲しいと、この本を読んで個人的に思いました。