オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

久しぶりに四国西部・愛媛県某所に行ってきました。とある方にお声がけいただき、地下水性の生物の調査です。地下水はもちろん、湿地帯に含まれます。

私が住んでいる福岡県から四国西部に行くには、大分県・佐賀関からフェリーに乗って、愛媛県・三崎に到着するルートが近いのです。このフェリー航路は国道197号線とされており、すなわちこの写真は国道の写真です。波も穏やかで良かったです。

昼食後さっそく、とある神社にあるというカワウソの供養塔を見てきました。以前に本で読んで、見たいと思っていた石碑なので感動です。拝んできました。非常にリアルな姿が掘られており、見たことのある人が掘ったことは間違いありません。確かにいたのです。

四国西部は国内で最後までニホンカワウソが確認されていた地域です。この供養塔についてはこちらの「ニホンカワウソの記録 最後の生息地四国西南より(宮本春樹・ 創風社出版)」で読んだものでした。私の愛読書です。全体的にうちのめされますが、何があったのかとても勉強になりますし、二度とこういう事態を引き起こしてはならないと強く思うわけであります。

 

ニホンカワウソが最後までいたであろう宇和海に面したリアス式海岸の風景。今回ようやくこのあたりに行くことができて、実際に少し環境を見て、色々と思うところがありました。

 

さて調査です。

ということでこれは上の写真の井戸とは別の井戸から出てきたものですが、メクラヨコエビの一種です。色素は失われており真っ白です。大変すばらしい湿地帯生物です。我々の足下の地面の少し下にはたいてい湿地帯があり、そうしてそんな暗黒の湿地帯にはこうした湿地帯生物がたくさん暮らしているわけです。色々と視野の広がる調査体験でした。こちらの詳細はまたいずれどこかで・・

 

せっかくの機会なので地元の高校生物部にお招きいただき、ミニ講演会をさせていただきました。昆虫嫌い!という意見が数名から聞かれやや衝撃でしたが、しかしこれは重要なところでありまして、嫌いな生き物となんとなく共存していくことが自然共生社会の極意、ということを伝えておきました。がんばって共存していきたいと言っていたので良かったです。生物多様性保全とのつながりを含めて、よく理解していただいたのではないかと思います。

 

終わったので先生方と懇親会です。

アジの刺身!美味しすぎました。

ぐれ(メジナ)の塩焼き!美味しすぎました。

走り貝(マガキガイ)!美味しすぎました。

ぼらめ(エソ類幼魚)のから揚げ!美味しすぎました。生物多様性の恵みが豊かです。

 

町のいたるところにあった牛鬼!四国と言えば牛鬼ですね。生物多様性が豊かな地域では妖怪の勢いも強いです。

 

ここまで来たので地下水性ゲンゴロウの聖地も巡礼してきました。とある会社の井戸です。この井戸から生物学上きわめて重要な新種の地下水性ゲンゴロウ・メクラケシゲンゴロウが発見されたのです。そしてこの井戸はまだ現役で使われています。社長さんにご挨拶して許可を得た上で、見学させていただきました。

↑こちらはそのメクラケシゲンゴロウ発見時に新聞に載った写真。地下水性昆虫の神・上野俊一博士が発見の報を受けて東京からはるばる来られた時の写真です。

せっかくなので神・上野俊一博士の真似をして同じ場所で記念写真をとってもらいました。オイカワ丸さんは割とミーハーなのです。

以上で今回の任務は終了です。

 

全体的に四国西部は生物多様性が豊かであることを実感しました。この豊かさは地元では当たり前なのかもしれませんが、日本の多くの地域で失ってしまったとても貴重なものです。みんなで大事にしていかなくてはいけません。その大事にしていく、という中には地下水と地下水の生物多様性も含まれます。というかおそらくこれは重要な要素なのだと考えています。今の日本において、地下水の生物多様性は過小評価されており、あまり大事にされていません。しかし地下水には確かに多様な生物が暮らしていることを、今回の調査で実感することができました。今後はもう少し地下水という湿地帯についても勉強して、その生物多様性についても考えていきたいと思います。