中島 淳・尾山大知・大井和之・今田明生・吉本亘成(2025)東京都から採集された外来ドジョウ属Misgurnus mohoityアムールホソドジョウ(新称)(コイ目ドジョウ科)の初記録.水生動物,2025:AA2025-55
ドジョウ新作論文です。麻布学園生物部の共著者が捕獲した謎のドジョウを形態と遺伝子の両面から分析した結果、外来ドジョウMisgurnus mohoityと同定されました。国内の野外からの標本に基づく初記録として、新称アムールホソドジョウを提唱するとともに、形態的特徴の詳細を報告しています。考察パートでは本種及びドジョウ属における分類学的混乱をめぐる諸々について、これまで調べた内容を注ぎ込み解説しております。ドジョウ愛好家必読の内容となっております。オープンアクセスですのでぜひお読みください。
もう論文に書きたいことはすべて書いたのでここで補足することもあまりないのですが、本種は極東ロシアから中国東北部、モンゴルにかけてのアムール川流域、中国の海河以北の諸水系が自然分布域と考えられます。それがなぜ日本の野外でみつかったのかというと、食用として中国から多く輸入されており、それを放流する人がいるからです。放流は環境破壊活動です。やめましょう。
放流によるもっとも深刻な事態はやはり遺伝子攪乱です。ドジョウ科魚類は種の境界が緩く、遺伝的に近いか遠いかに関わらず、簡単に交雑してしまいます。日本においては放流された外来集団との交雑のために、形態と遺伝子が一致しないという例が既に報告されており、今後も各地で報告されるだろうと思います。とはいえ本論文で示した形態的特徴は少なくとも純系であれば、確実な区別点になりうるでしょう。交雑しうる、ということを念頭において、きちんと外部形態のチェックポイントを見ていけば、形態のみでもかなり正確な同定は可能と思われます(交雑かもしれない、ということを含めて)。
また、中国でもドジョウ属は重要な食用魚ですが、そのために広域から収集されて一緒くたに養殖されているようで、形態と遺伝子の対応がバラバラなキメラドジョウが日本に輸入されています。ということは中国でもきっと遺伝子攪乱は深刻なのだろうと思います。由々しき事態ですが、なんともなりません。悲しいです。
それから論文で示したように、アムールホソドジョウのmtDNA調節領域やcytb領域の塩基配列の特徴は、日本列島の在来ドジョウとかなり近く、強い関係があることが伺われます。生物地理学的に興味深い種と言えます。ドジョウ属については、mtDNAだけではその系統関係は議論できません。他の遺伝子領域も用いた、詳細な分子系統地理学的研究が望まれます。
ということで”クレードB”のドジョウたちを紹介します。

アムールホソドジョウMisgurnus mohoity (Dybowski, 1869)

ドジョウ日本系統(たぶんMisgurnus rubripinnis (Temminck and Schlegel, 1846))

ドジョウ中国大陸系統Misgurnus anguillicaudatus (Cantor, 1842)

ヒョウモンドジョウMisgurnus sp. OK(これはおそらく・・・)
ついでにクレードAからこの方も。

キタドジョウMisgurnus chipisaniensis Shedko and Vasil’eva, 2022(しかしこれはおそらく・・)
で、上記はいずれも典型的な個体ですが、人為的な放流がなされるとこれらが混ざって中間型というかキメラ型というか、そういう個体が出てくる、ということになります。
ドジョウ属についても長らく研究を続けておりまして、また様々な研究例も蓄積されてきておりまして、これらを統合してだいぶわかってきたことがあります。耄碌する前にこれまで得た知見は論文化し、順次、公表していきたいと思います。