オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

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今日の水生昆虫はトゲナベブタムシAphelochirus nawaeです。水のきれいな砂底の河川の中流域、水路などに生息します。前胸背の両角が鋭くとがっていて超絶カッコイイです。国内では東海地方以西の本州と九州北部から点々と記録がありますが、かつての水質汚濁の影響を受けたからか、現在の生息地は飛び地的で稀な種となっています。

本種はプラストロン呼吸により水中の溶存酸素を直接取り込めるため、水面に浮上することはありません。高度に水中生活に適応したカメムシであります。しかしこのプラストロン呼吸は界面活性剤により機能しなくなることから、水質汚濁には非常に弱いという側面があるようです。

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今日の水生昆虫はチビコマツモムシAnisops exuguusです。東海地方以西の本州~南西諸島に広く分布します。水面にあまり浮上せず、常に背泳ぎしながら中層で群れをつくって暮らしています。生きたミジンコ類などを捕食するものと思われますが、詳しい生態は不明です。

コマツモムシ属は複数種が同所的にいることが多いのですが、特にこのチビコマツモムシはこれまで単独でいるのを見たことがありません。似たような姿かたちをしているコマツモムシ属の生態やハビタットの違いは調べてみたら面白そうです。

それから本種は近年になって九州以北での記録が増えています。単に気づかれていなかったのか、それとも気候変動等の影響で分布が北上しているのか、興味深いです。私が主に調査をしている福岡県では多くはありませんが、日本海側のため池などでコマツモムシに混ざって採れることがしばしばあります。コマツモムシより明らかに小型なので区別は容易ですが、コマツモムシの幼虫が多いと見落とすことがあります。成虫は光沢のある翅があるのに対して、幼虫は腹部がむき出しです。したがってコマツモムシ属を採ったらまずは翅があるかどうか確認するのが良いです。

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発売日まで続ける予定なので、今日の水生昆虫はまだ続きます。今日の水生昆虫はアリアケキイロヒラタガムシEnochrus bicolorです。塩分のある海岸付近の湿地に生息する珍虫です。当初新種E. yukinoaeとして記載されましたが、その後ユーラシアに広く分布するE. bicolorと同種とされました。しかし個人的には本当に同種かなという気がしています。瀬戸内海と有明海の沿岸域から点々と記録されています。

キイロヒラタガムシに少し似ていますが、一回り大きく区別は容易です。何とも言えない美しさを誇ります。実はこれまで採集したことがなく、以前に間違って採集したとかブログに書いてしまいましたが、今回ようやく本物を採集することができました。標本では見ていましたが、生きて動いているのは格別です!そして野外でも秒速で区別できるほどに、悩むまでもなく、キイロヒラタガムシとはまったく別物でした。今回は既知産地でしたので、次は新産地を発見したいものです。感覚はつかみました。いそうな場所はすでにロックオンしています。

日記

1月23日発売予定のネイチャーガイド日本の水生昆虫(リンク)が、先に手元に来ました!感無量です!!!夢のひとつが叶いました。生きていてよかったです。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました!

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本体主構成は図鑑、コラム、検索です。検索はかっちりした部分もありますが、どちらかというとAIおいかわ丸的な、いつもこんな感じで脳内探索してるよなというようなのの実体化を試みました。あと半水生のコウチュウ目、カメムシ目も少々紹介しています。

淡水魚に熱中するきっかけとなった図鑑(山渓カラー名鑑日本の淡水魚)と同じ出版社から日本のドジョウを出すことができ、今回、水生昆虫に熱中するきっかけとなった図鑑(図説日本のゲンゴロウ)と同じ出版社から日本の水生昆虫を出すことができたのは、偶然だけどなんだかうれしいです。そして、僭越ながら、誰かにとってのそういう図鑑になったらよいなという思いも、あります。そういうつもりでつくっています。ということで少しでもピンときたら、ぜひ手元に置いて下さい。少しでもピンと来ていたのであれば、それは正しいです。損はさせません。狂気は込めました。

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今日の水生昆虫はリュウキュウムナビロツヤドロムシElmomorphus amamiensisです。以前はムナビロツヤドロムシの亜種とされていましたが、今は種に昇格しています。奄美群島沖縄諸島久米島の河川に生息し、水中の岸際の植物の根の上を歩いて暮らします。羽化間もない新鮮な個体は金色ですが、古い個体では擦れて黒っぽくなってきます。ヒメドロムシ科とは異なるドロムシ科に属します。個体数は多く、普通にみられます。ただ詳しい生態はまったくわかっていません。

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今日の水生昆虫はキボシツブゲンゴロウJapanolaccophilus niponensisです。清流に生息し、かなり流れの早い環境にも生息します。3ミリ程度と小さいですが、見ての通り黒い光沢のある背面に鮮やかな黄色斑点をちりばめたきわめて美しい種です。北海道から九州にかけて分布しますが、西に行くほど少ないです。一属一種の日本特産種で、まさに日本を代表するゲンゴロウの一つと言えましょう。

ところでゲンゴロウ愛好家のバイブル「図説日本のゲンゴロウ」には、「採集時は注意しないと跳ねて逃げられる」との一節があり、油断すると本当に跳ねて逃げます。

日記

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今日の水生昆虫はハセガワダルマガムシOchthebius hasegawaiです。水しぶきのかかる岩上~ちょっと水没しそうなあたりというマニアックな環境を好みます。あまり知られていませんが、北海道~九州まで広く分布し、ちょっとした清流では比較的普通です。2ミリ程度ですが、宝石のような美しさです。川の水面から突き出した水しぶきのかかるような岩をみかけたら、ぜひ水面ギリギリまで顔を近づけて、探してみてください。