オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

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今日の水生昆虫はマルチビガムシPelthydrus japonicusです。本州(東海地方以西)、四国、対馬から知られる日本固有種ですが、きわめて稀な種です。水質の良好な河川に生息し、水中の植物の根際や岸の砂利間から採集されていますが、詳しい生態はまったくわかっていません。ちなみにチビマルガムシというものも存在しますが、属も異なり姿も生態も全く異なります。名前が似ているだけです。ついでに言えばナガアシドロムシとアシナガドロムシ、ヒメツヤドロムシとツヤヒメドロムシはそれぞれまったく別の種です。名前が似ているだけです。

さて、そんな色々な水生昆虫が掲載されている素晴らしい図鑑「ネイチャーガイド日本の水生昆虫」がいよいよ1月23日に発売となります!(リンク)。ご予約まだの方はぜひ!損はさせません!!!!

日記

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今日の水生昆虫はキイロヒラタガムシEnochrus simulansです。主に水田や浅い湿地に生息し、本州~九州ではもっとも普通の水生昆虫の一つです。角度によっては黄金色に輝き、とても美しいです。幼虫は春から秋までみられますが生活史の詳細はあまりわかっていません。泳ぎはあまり得意ではなく、多産するところで植物を踏むと、多数の個体が水面に浮上してきて、ちょこまかとかわいらしく泳ぎます。

先日紹介したアリアケキイロヒラタガムシ(リンク)と少し似ていますが、本種はより小さいことに加えて、上翅には条溝列が発達する(アリアケキイロでは条溝にならない)ことで区別は簡単です。

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今日の水生昆虫はシマアメンボMetrocoris histrioです。北海道~奄美群島にかけての渓流環境で普通にみられる、日本を代表する流水性アメンボです。名前の通り美しい縞模様をもちます。成虫になっても翅がない無翅型が多いですが、写真は翅がある有翅型です。無翅型と有翅型は前胸の形や模様なども大きく異なっていて、一見すると同じ種とは思えないほどです。

普通種であることから生活史もよく調べられていて、基本的には卵で越冬するようですが、環境によっては冬季も成虫や幼虫が見られる場所があります。また長翅型は一般的に秋に多く出現することも知られています。

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今日の水生昆虫はホソガムシHydrochus aequalisです。日本固有種で東北地方~近畿地方の本州に分布します。模式産地の京都府巨椋池は埋め立てにより消滅し、その後100年以上記録がなく絶滅も心配されていましたが、東北地方の一部で再発見されました。しかしかなり局地的で、絶滅の危機は続いています。生態はまったくわかっていません。私が採集したのは大きな池沼の脇の、浅い水たまりでした。

ホソガムシ科はガムシ科に近縁な一群で、国内からは4種が知られていますが、どの種もかなり稀な種です。いずれの種も独特の金属光沢をもち、大変美麗です。

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今日の水生昆虫はミナミツブゲンゴロウLaccophilus pulicariusです。国内では沖縄島以南の南西諸島に分布します。体長2.8ミリ前後と小型の種で、渋い系が多い日本産ツブゲンゴロウ属の中では別格の、圧倒的にわかりやすい美しさを誇る素敵な種です。詳しい生態はまったくわかっていません。ツブゲンゴロウ属の例に漏れず、本種もピツンピツンと跳ねるので、油断すると逃げられます。

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今日の水生昆虫はトゲナベブタムシAphelochirus nawaeです。水のきれいな砂底の河川の中流域、水路などに生息します。前胸背の両角が鋭くとがっていて超絶カッコイイです。国内では東海地方以西の本州と九州北部から点々と記録がありますが、かつての水質汚濁の影響を受けたからか、現在の生息地は飛び地的で稀な種となっています。

本種はプラストロン呼吸により水中の溶存酸素を直接取り込めるため、水面に浮上することはありません。高度に水中生活に適応したカメムシであります。しかしこのプラストロン呼吸は界面活性剤により機能しなくなることから、水質汚濁には非常に弱いという側面があるようです。

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今日の水生昆虫はチビコマツモムシAnisops exuguusです。東海地方以西の本州~南西諸島に広く分布します。水面にあまり浮上せず、常に背泳ぎしながら中層で群れをつくって暮らしています。生きたミジンコ類などを捕食するものと思われますが、詳しい生態は不明です。

コマツモムシ属は複数種が同所的にいることが多いのですが、特にこのチビコマツモムシはこれまで単独でいるのを見たことがありません。似たような姿かたちをしているコマツモムシ属の生態やハビタットの違いは調べてみたら面白そうです。

それから本種は近年になって九州以北での記録が増えています。単に気づかれていなかったのか、それとも気候変動等の影響で分布が北上しているのか、興味深いです。私が主に調査をしている福岡県では多くはありませんが、日本海側のため池などでコマツモムシに混ざって採れることがしばしばあります。コマツモムシより明らかに小型なので区別は容易ですが、コマツモムシの幼虫が多いと見落とすことがあります。成虫は光沢のある翅があるのに対して、幼虫は腹部がむき出しです。したがってコマツモムシ属を採ったらまずは翅があるかどうか確認するのが良いです。