オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

ニホンカワウソ―絶滅に学ぶ保全生物学 (National History Series)
ニホンカワウソ-絶滅に学ぶ保全生物学

気まぐれ書評。年末年始にかけて読んでいたのがこの本。何日か前に上野動物園に行ったのは実はこの本が原因です。カワウソに関する様々な分野の情報が記述されていて大変充実した内容でした。江戸にいたカワウソ、妖怪としてのカワウソ、野生動物としてのカワウソ、そして保全対象としてのカワウソ。国内外の研究事例、保全活動の実際も豊富に掲載されており、巻末には参考文献も網羅されています。ニホンカワウソは河童のモデルとされることもありますが、カワウソそのものも妖怪として良く知られています。河童の手として保管されているもののいくつかはニホンカワウソのものであることも有名です。それほど日本の人々に馴染み深い存在であったカワウソがどのようにして日本から姿を消してしまったのかが一読して良く理解できます。生活史の記載的研究をベースにした保全の重要性、保全を行おうとする側の合意形成の大切さ。あと少し、何かの歯車が変わっていれば、今でもまだ日本のどこかでニホンカワウソが生き残っていたかもしれない、との筆者の思いに胸がつまりました。完全な野生個体が確認された最後の年は1977年とのこと。それは私の生まれた年でした。