オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

書評

「ウナギのいる川 いない川」内山りゅう(著)・揖 善継(監)
ウナギのいる川 いない川 (ポプラサイエンスランド)
写真家の内山りゅうさんと和歌山県立自然博物館の揖 善継さんの共働作品です。ポプラ社のポプラサイエンスランドというシリーズで、子供向けという雰囲気のつくりですが、内容は濃いです。非常にわかりやすく、何より写真はとても美しい。ウナギの生態、分類、さらには文化や保全までわかりやすく解説されていて、まさに決定版です。1300円(税抜)という手の出しやすい値段ですので、一家に一冊、おすすめです。
残念ながらニホンウナギは最新の環境省レッドリストでは絶滅危惧IB類という、絶滅危惧種の中では二番目に高いランクで掲載されている状況になっています。調査をしているとよく見かける魚ですが、昔の調査記録あるいは地域の方の話を聞く限りでは、本来の姿はこんなものではなくそれこそ「あふれかえるほどいた」魚だったようです。絶対数ではなく、減少率から絶滅危惧種にランク入りしたと言えるでしょう。
遠くグアム島近くで産卵することが最近になって明らかとなりましたが、産卵行動についてはよくわかっていません。もし仮に「ものすごくたくさんいないとうまく産卵できない」というタイプの魚であれば、ものすごくたくさんいなくなったという現状は、本当に楽観できる状況ではないのかもしれません。ある年からぱったりとウナギの稚魚が泳いで来なくなるかもしれない、ということも考えられなくもないということです。
ニホンウナギを増やすのにどうしたらよいか?漁獲規制というのは一つ重要な方法ですが、個人的にはもっと環境を良くすることも並行して進めるべきだと思います。例えば埋め立てにより消滅した干潟環境の復元、河川と水路・ため池との接続の復元、コンクリート護岸を隙間のあるものに変えていく、などなどウナギにとってよさそうな環境再生の手段はいくらでもあります。この本を通して減りつつあるウナギに関心をもつ人が増えてくれることを、またそうしてウナギを中心に豊かな水環境が復活することを、期待したいです。



まったくどうでもいいのですが監修者の揖君は私の大学の同期でサークルも同じ、住んでいたアパートも同じという間柄です。だからといって過剰にお勧めしているわけではありません。本当にお勧めです。