オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

昨日から今日にかけて、裏庭に新しい湿地帯をつくる作業をしました。

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今回はコンテナを埋めてお手軽につくるタイプです。コンテナビオトープです。

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これは初代コンテナビオトープ。自宅の横側にあります。水際の処理がいまいち気に入っておりません。

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そこで初代コンテナビオトープからイグサを半分ほどとってきました。これをベースにします。ちなみに私の家で栽培しているこのイグサはただのイグサではなく、福岡県が開発した「筑後みどり」という品種で、畳表用の高品質なイグサです。10数年前の職員研修において、私は福岡県農林業総合試験場筑後分場でのイグサ研修を選択し、その時に担当の職員の方からわけてもらったものをずっと栽培していたのでした。高品質に育てる方法が農研機構のHPに書いてありました→ リンク

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余談でした。イグサは湿っていれば陸上でも育ちますので、水際から陸域へのエコトーンの造成に適しています。高品質畳表品種「筑後みどり」ですが、普通に栽培すると普通のイグサと同じように育つので、このように上に乗せつつ水中に根がいくような感じで設置します。

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コンテナの縁には、表の湿地帯ビオトープからもってきたコケ類やミズユキノシタなどが含まれた土を張り付けていきます。それからもう一つエコトーンが欲しいので、植木鉢と石を組み合わせてちょっと段をつくり、そこになだらかになるように土を載せていきます。ここには庭で栽培しているナンゴクデンジソウを植え付けました。

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一通りできました。これから水をいれていきます。

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水を入れたところです。初代コンテナビオトープよりもかなり水際の処理が良い感じです。とにかくエコトーン!エコトーンが大事なのです。

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正面から。水中にはこれまた表の湿地帯ビオトープで栽培しているジュンサイトチカガミを投入しました。今後、夏に向かっての変化を楽しみたいと思います。湿地帯!湿地帯!

 

盛り上がったので、生物多様性保全に寄与する湿地ビオトープについて私見を書いてみます。どういうのが良いのか、何がだめなのか、ということをしばしば聞かれるのですが、一概にどうというよりはいくつかのパターンがあり、そのビオトープがそれぞれどれに合致しているのかというところから方針を決めていくと、生物多様性保全に寄与する間違いのない湿地ビオトープがつくれます。大まかには以下の考え方に基づいていくべきだろうと思っています。

 

〇 絶対にすべきではないこと

特定外来生物の飼育・栽培をしない、ということがまず挙げられます。水草類には特定外来生物が多く、しかもわりとその辺に生えているので(オオフサモ、ナガエツルノゲイトウ、ブラジルチドメグサなど)、こうしたものを湿地ビオトープに植えないよう注意が必要です。これらの栽培は犯罪です。

 

〇 閉鎖的で流れ出ない湿地ビオトープ

そこで増えても野外へ出ていかない構造であれば、自由に楽しんで良いと思います。外来種であっても侵略性が低いものであれば、そこにいれることに問題はないでしょう。そうした場があれば水生昆虫類などは勝手にやってきて増えたりもしますし、場合によっては両生類が産卵に来るなど、その場があることで生物多様性保全に寄与します。あるいは希少種の系統保存などを狙って、そうしたものを専門家や愛好家からわけてもらって、飼育・栽培とかするのも楽しいしやりがいもあって良いかもしれません。

 

〇 日常的に流れ出る湿地ビオトープ

そこで増えて、流出して、野外へ出ていくような構造では、外来種は飼育・栽培すべきではありません。在来種であっても遺伝的攪乱を招く場合があり、特に遠方から持ち込むことはよろしくありません。こういうビオトープでは場のみ造成して、「自然にやってくる生物だけでそのビオトープが構成されることを目指す」のが一番良いです。本当に、ただ場があるだけで、生物多様性保全には確実につながるものです。しかしながらもっと攻めたい、という場合は同一水系産のものを持ち込むことは一般的に遺伝的攪乱を招くことはなく問題が少ないです。分類群によっては平野を共有する水系であれば、同一の遺伝的集団ということもあります。このあたりは種の特性によって異なりますが、ようするに遺伝的攪乱を招かないのであれば、いれても問題が少ないということです。ただしドジョウのように、よく似た外来種が増えているような湿地帯生物もいるので(リンク)、そういう場合は遺伝的に問題がないことを確認した上でいれるべきでしょう。持ち込む土なども、大量にある場合には、やはりなるべく近郊地の同一水系内からもってくることが基本となります。

その他、細かいことを言うと色々とありますが、まずは上記の知識は生物多様性保全に寄与する湿地ビオトープをつくる上で重要です。