オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

「中小河川の技術基準 解題 多自然川づくりのすすめ」島谷幸宏(著)
今年の8月に国土交通省から出された通達である「中小河川に関する河道計画の技術基準について」の解説本です。この通達は県以下が管轄する中小河川についての川づくりの基準や方針を示したもので、本文はこちらで見ることができます(リンク)。過去20年かけて多自然川づくりの知識・技術も蓄積されてきたので、それらを踏まえて、生物の生息に配慮した川づくりとは何か?具体的にはどうしたら良いのか?といったあたりの指針を示したものです。
この本はその通達の内容について、具体的な実例を伴って解説するという形になっており、ようするにどういう風にすれば良いのか、が現場の河川技術者や県市町村の河川担当者(ついでに生物の専門家)にも良くわかるようになっています。今後はこの基準に基づいて中小河川の管理や改変が行われていくという流れでしょうから、関係者は必読と言えるでしょう。
一読してみましたが、通達の内容を非常にわかりやすく解説しています。そして、こういう思想で川づくりが行われれば、無駄に消えていく生き物は今よりだいぶ少なくなるのではないかと今後に希望が持てるものになっています。川の生き物に関わっている方なら読むとなるほどと思う部分が多いでしょう。値段は500円とお安いので河川技術者のみならず、生き物方面の方にも一読をオススメします。印刷版と電子版があるみたいです。電子版の購入はこちら→リンク。印刷版はたぶん出版社に問い合わせたら良いだろうと思います。
ただし、先日某シンポジウムで著者が、「この通達に従って川づくりをすれば優良可の三段階で良はとれるだろうけれども、優をとるにはやはりそれぞれの川の個性を良く知ってさらに工夫する努力をしなければならない」、というようなことを言っていました。一律の基準に従い治水だけを考えて河川の改変を行う時代は終了しつつあり、その川の個性や生息している生物に考慮した柔軟な思想が今後必要とされてくるのだろうと思います。今いる生物は最低限現状維持、10年20年後には今よりもはるかに多くの生物が人間と共存していくようにしようというのがこの間の某国際会議で決まったことであると思います。川にはたくさんの生物が生活していますから、地方行政にいる河川担当者がふるう采配は今後とても重要になってくるはずです。
さいきんは立場上川の方面にかかわることも多いのですが、こういうわかりやすい本を片手に河川の技術者と協議が出来るのはありがたいです。国●省もこう言ってるんだから何とかしていきましょうよ、とか言える時代が来るとは・・・。あとは●●省がなんとかなってくれれば・・。