オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

かしわもち、です。昨日購入したサルトリイバラのかしわもち。いげの葉まんじゅうと書いてありました。大牟田市産。食べます。

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いわゆるいきなりだんごの皮のような感じでした。白玉粉でできているということですかね。

 

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庭の植木鉢で栽培しているモウセンゴケガガンボの一種が捕まっていました。葉っぱがこう捕まえるように曲がっていて、食虫植物というのはすごいものです。これは福岡県産です。とあるダムの横に群生している場所があったので、そこから1株採ってきて栽培しているものですが、10株以上に増えました。

日記

魚屋さんにエツとワラスボが売られていました。いずれも朝鮮半島から中国大陸の沿岸に広く分布しますが、国内ではほぼ有明海にのみ生息する珍しい魚です。特に筑後川に遡上してくるエツの漁期は5月から7月20日の間となっているので、佐賀県や福岡県の有明海側ではこの時期に鮮魚コーナーでしばしば見かけます。

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ということで購入しました。今回ここではエツは1匹150円、ワラスボは1匹50円でした。

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エツです。カタクチイワシ科ですが見た目はかなり独特です。ちょうど今の時期が産卵期で、筑後川に産卵のため遡上してきたものを刺し網で捕獲する漁業が行われています。3匹を塩焼きに、2匹を刺身にしました。

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小骨があるので骨切りします。家庭用魚焼き機で焼けます。写っている貝はアゲマキです。この貝はかつては有明海ではいくらでも獲れたようですが、現在は絶滅寸前です。今回は韓国産が売られていたので買ってみました。とてもおいしいです。

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次はワラスボです。ワラスボはハゼの仲間で、泥の中に潜って暮らしています。そのため眼が小さく体は赤黒く、独特の雰囲気です。牙が鋭い印象がありますが、これは貝類の水管などをひっかけて食べるためと言われています。実際のところ噛まれてもあまり痛くはありません。今回はこの佐賀県有明海漁協の解説(リンク)に従って味噌汁にしてみました。

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できました。エツの塩焼きと刺身、ワラスボの味噌汁、焼きアゲマキです。たいへんおいしかったです。

さて、これはまさに生物多様性の恵みというものですが、これらはかつては有明海沿岸ではいくらでも手に入る日常的なものでした。しかしこのうちアゲマキは前述したようにすでに絶滅寸前で、手軽に食べられる存在ではありません。エツも筑後川河口堰の建設後、往時と比べれば激減しており、いまは厳しく漁期を設定して資源管理をしている状況です。こうした恵みをいつまでも得られるようにすること、そして気軽に楽しめるようにすること、これが生物多様性保全の大きな目的の一つです。野生生物を保全することは野生生物のため、ではあるのですが、それは実は人類のためであるということです。




 

日記

今日は湿地帯調査でした。今回の目的の一つが某研究課題のための外来魚鰭サンプル収集の一環としての、ソウギョの採集です。私の実力では心もとないので、ソウギョ採集力の高い有明の達人KOMIYA氏にお願いしました。いる場所がわかっているので簡単に釣れます!と心強いお言葉・・

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餌はオオカナダモです。ソウギョは草魚というだけあって草食なんですが、地域によって釣りやすい餌の草というのがあり、ここではオオカナダモが実績があるとのこと。こんな感じで針につけます。

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そして水面を呆然と泳いでいるソウギョの口元におろすと・・・これはまさに食べようとしている寸前の様子ですが・・

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かかりました!一撃!!スゴイ!!!匠の巧みな技により軽々と岸によせられます。

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釣れました!12キロの大物です。ソウギョ久しぶりに触りました。

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記念に持たせてもらいました。あとで測ったところ、全長100㎝、体長87㎝でした。

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生態系被害防止外来種リストで「その他の総合対策外来種」に選定されていることもありますし、私の立場上も、そのまま川に戻すのがはばかられます。遺伝子用サンプルを得るとともに、本体も何らかの標本にすべく、今回は持ち帰りました。では運びましょうと手慣れた様子でソウギョを運搬する達人が頼もしいです・・。このたびはどうもありがとうございました!

 

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その他の出来事。カワアナゴの標本が欲しいんですよね~とお願いしたところ、簡単に捕まえてもらいました。なるほど、こんなところにいるのかと勉強になりました。知らないことを知るのは良い。そしてカワアナゴはかっこいい。

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これはまた別の場所で、ニッポンバラタナゴ。今年は春先かなり湿地帯調査自粛をしていたので、久しぶりに出会った感じうれしいです。産卵期はもう終わってしまっているようでしたので、色は控えめでしたが。

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それからこれはまた別の場所。KOMIYA氏の管理しているビオトープの水生昆虫も調べさせてもらいました。写真はコガタノゲンゴロウ、コガムシ、ヒメガムシなど。このほかウスイロシマゲンゴロウ、コシマゲンゴロウ、ハイイロゲンゴロウ、チビゲンゴロウ、キイロヒラタガムシ、ルイスヒラタガムシ、マメガムシ、トゲバゴマフガムシなどがいました。こちらは詳しく調べる予定です。

ということでよい湿地帯調査でありました。湿地帯エナジーも吸収したのでしばらく命がつながりそうです。

日記

生物多様性には3つの多様性があります。すなわち生態系の多様性、種の多様性、遺伝子の多様性です。ということで生態系の多様性として福岡県の海域を例にして話をすることが多いです。実は福岡県は一つの県の中に極端に異なる性質をもった3つの海をもっています。有明海、瀬戸内海(周防灘)、日本海玄界灘・響灘)です。

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おなじみ有明海!広大な軟泥干潟と最大6メートルもある干満差、そしてそれにより引き起こされる強烈に濁った水が特徴です。上の写真ではムツゴロウがたくさんいる様子が写っています。このほか、ワラスボ、エツ、アリアケシラウオ、アリアケヒメシラウオ、ハラグクレチゴガニ、ヤベガワモチなどなど国内では非常に珍しい生物が多く生息します。

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それから瀬戸内海(周防灘)!瀬戸内海というと本州と四国を思い起こす人が多いですが、当然のことながら九州にもあります。そしてかつての瀬戸内海の環境を多く残している最後の場所が実は九州の瀬戸内海です。広大な干潟が出現するのは有明海と似ていますが、砂礫底の「固い」干潟も多く、また比較的透明度が高い場所が多いのが特徴です。アオギスやカブトガニもまだ多く生き残っています。

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それから日本海玄界灘・響灘)!透明度の高い水に岩礁や砂浜というイメージですが、色々な干潟も点在するのが特徴です。実は日本列島にはかなり普遍的にみられるタイプの海と言え、そのためいわゆる「普通の」海の生物が多く生息しています。ただこんな「普通の」海も朝鮮半島や中国ではかなり珍しい海です(あちらには有明海のような海が多い)。


こうしてみると一口に海の生態系と言っても、色々なものがあるということがわかると思います。そしてどれか一つの海の生態系があればよい、というものではなく、また生物多様性保全の上では、そこにあるべき海があるべき姿で健全にあることが重要だということもわかると思います。

残念ながら、有明海、瀬戸内海、日本海、いずれも環境の悪化は進んでいます。かつてはいくらでも採れた「海の幸」も、種類によってはまったく採れなくなってしまいました。これらの海はそれぞれ独自の「海の幸」を長年にわたって人類に与え続けてきました。どの海もそれぞれの海の特徴を生かしながら大事にし、食糧生産の場として、レクリエーションの場として、大事にしていかなくてはいけません。今後どうやって再生していくのか、ぜひ多くの人に考えていって欲しいと思っています。日本の海はいま、確実に、「死」に向かっていると私は思っています。しかしまだなんとかなります。なんとかしたいです。

 

論文

Ryndevich, S.K., Angus, R.B.  (2020) Redescription of Hydrobius pauper (Coleoptera: Hydrophilidae), with a key to the Eurasian species of the genus Hydrobius. Zoosystematica Rossica, 29: 77–86. (LINK)

スジヒメガムシHydrobius pauperの再記載とユーラシアのスジヒメガムシ属の検索という論文です。昨日にガムシ分類学者のM博士に教えてもらいました。いつもありがとうございます!論文はオープンアクセスです。

スジヒメガムシ属は9種が知られる止水性のガムシ科で、日本ではスジヒメガムシHydrobius pauper Sharp, 1884 ただ一種が北海道と本州(関東地方以北)に分布する、ということに長らくなっています。しかし全北区に広く分布する同属のHydrobius fuscipes (Linnaeus, 1758) が北海道に分布するとする文献もあり、このあたりは実は混乱のあったところでした。ネイチャーガイド日本の水生昆虫でもその点に触れています。

この論文ではH. pauperの模式標本の形態を詳細に調べて、H. fuscipesはじめユーラシアの同属種とは形態で区別が可能であること、H. pauperは本州の固有種である可能性があること、北海道でこれまで採集された個体はH. fuscipesに同定されることなどを指摘しています。

なお、H. pauperの模式産地は「Oyama, Honshu Island (Japan)(=神奈川県大山?※)」で、あの有名なG. Lewisの採集によるものです。また、H. pauperを記載したSharp自らが同じくLewisの採集した個体に基づいて北海道(幌別)からH. fuscipesを記録していることが書かれています。つまりSharpはこの2種を区別して北海道からfuscipesを記録し、大山から別種としてpauperを記載していたということになります。そして北海道にfuscipesが分布するという情報はこれが根拠になっています。

※先に栃木県小山としましたが、ルイス標本のOyamaは神奈川県大山の可能性が高いとのことです。修正いたします。ご教示いただいたY富先生ありがとうございます。

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こちらはネイチャーガイド日本の水生昆虫に掲載した「スジヒメガムシ」の2枚目と同一個体です。北海道根室市産ですので単純に分布域だけ考えると、この個体はH. pauperではなくH. fuscipesの可能性が高いということになります。

しかし北海道と言ってもその生物相は一様ではないことから、北海道産がすべてH. fuscipesとは言えません。また論文をみるとわかる通り古い限られた標本に基づいた調査であり、その違いも微妙な気がしなくもありません。新鮮な標本に基づいたさらなる研究が必要ではないかと思います。ちなみに本州のスジヒメガムシはかなり稀なようで、私は採ったことがありません。そのあたりも研究がなかなか進みにくい理由かもしれません。しかしもし本当に本州の真のスジヒメガムシH. pauperが本州固有の貴重なものであれば、きちんと取り扱い、場合によっては保全対象にすることなども考えなくてはいけないでしょう。まだまだわかっていないことがあります。ここはぜひとも実物で見比べてみたいものです。ということで本州産の標本あるいは生きた個体を提供いただけるという有難いお方をいつでもお待ちしております。よろしくお願いします。

余談ですが今回のこの論文ではネイチャーガイド日本の水生昆虫が引用されていました。うれしいです。英語タイトル、英語著者表記をつけた甲斐がありました。しかし・・せっかくわかりやすく苗字をすべて大文字にしたのに、一部間違われてしまっています・・ひろゆき・・

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日記

先週新種記載され(一部の業界で)盛り上がっていたヒョウタンヒメドロムシ(ブログ記事はこちら)ですが、新聞にも記事が出たようです↓私の撮った写真を使っていただきました。

mainichi.jp

さて、ようやく県内は移動しても良いという感じになってきましたので、久しぶりに川に調査に行きました。のびのびになっていた某特定外来植物の状況確認です。

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これです。ナガエツルノゲイトウです。実はF岡県ではあまり確認されておらず、同じく特定外来生物のブラジルチドメグサやオオフサモの方が問題化しているのですが、昨年末に思わぬ川で本種をみつけてしまい焦っているところでした。本当は春先に一度行きたかったのですが、例のあれのせいでかなわず。。そして予想通り増えていました。

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ひとまずこの群落、1.8m四方ですが1時間ほどで駆除できました。こちらが駆除後です↑

しかしまだあります。

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別の場所にももう一群落あったのでこちらも少しやってみました。こちらは9m×1~2mという感じでしょうか。ただ陸域にもかなり入り込んでいます。

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こちらも水面に広がっている方はなんとかとりました↑

しかしながら陸域に侵入している部分はどうにもなりそうもなく、あきらめました。

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こんな感じです。上に土砂も多くたまっておりタデ類とともに陸上に繁茂しているので、なんとも困難です。

今回どんな感じか様子もわかったのでなんとかこれ以上増えないよう、色々と作戦を考えていきたいと思います。なおナガエツルノゲイトウは茎が折れやすく、折れた茎からも発芽することが知られています。すなわち駆除中に下流に流れていかないよう注意が必要です。今回はサデ網を下流側に構えて除去しつつ、他に流れていく茎がないか注意しながら作業を行いました。

九州では佐賀市が昨年に「佐賀市ナガエツルノゲイトウ防除実施計画」を策定しているようです→

www.city.saga.lg.jp

主な害として「水路の通水阻害、雑草化、そして在来種への悪影響」が挙げられています。外来水草の多くはアクアリウム用に輸入されたものが遺棄されたものが発端とされています。水槽内で水草が増えても、決して川や池に遺棄しないようにお願いいたします。また特定外来生物に指定されている種の栽培や遺棄は、犯罪となっております。お気を付けください。

 

日記

ポン氏のストレス&私のストレスがともにMAXに達して暴れだしたので、近所の休耕田地帯にいきました。

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水没していないように見えますが水没しています。

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ヌマガエルがたくさんいました。ヌマガエルも大きい個体を捕まえるのはなかなか大変です。

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 帰ろうとしたところでなんと大きなアオダイショウが!さっそく捕まえました。ポン氏も興奮してつかんで喜んでいました。丁寧にお帰りいただきました。

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ざくざくと草深い場所にもはいっていくポン氏でした。こうした身近な自然環境は人類にとってとても重要だということが、このコロナ禍の中で再認識されたのではないでしょうか。生物多様性保全はとても重要です。この後の新しい日常において、身近な自然環境と生物多様性保全が社会的に重要な課題として位置づけられることを願っています。