オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

長かった梅雨が終わった模様です。これからは毎年ずっとこんな感じの降り方なんでしょうか。流域治水という声も出てきております。色々なやり方が変っていくのでしょう。私の立場としてはそうした変化の中に適切に生物多様性保全を入れ込みつつ、これまでの知識を何等か生かす場にいられないかと思っているところです。

と、いうことで今日は観察会でした。晴れです。

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本日のライブ会場はこちら、棚田です!もちろん棚田に勝手に入ったら怒られますが、ここでは観察会用のビオトープビオトープ水田があるので、荒らしても大丈夫です。

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こんな感じで楽しく皆さん、採集しておりました。私も楽しいです。豪雨の影響でビオトープの状況は悪いとのことでしたが、ヌマガエル、アカハライモリ、ヒメガムシ、トゲバゴマフガムシ、ウスイロシマゲンゴロウ、チビゲンゴロウ、アメンボ、ヒメアメンボ、サワガニなどが採れまして、解説する内容は十分でした。チビゲンゴロウでどれだけ興味を引けるか?講師の手腕が問われます。

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ヌマガエルです。きらめいています。

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解説中にニホントカゲの幼体が現れましたので、これも捕獲して説明。美しい青いしっぽ!良かったです。

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おしまい。

日記

今日は毎年行っている行政職員向けの研修会講師業でした。天候がアレで危ぶまれましたが、多少の予定変更で済み、なんとか採集までできました。問題もなく、良かったです。

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水質指標となっている底生動物の同定について。大まかな分類群を理解することがまずは重要です。という話を実物をもちいて。通常はここまでで十分ですし、ここまでわかっておくといつでもその先に行けます。非常にコンディションの悪い中、15種類お見せすることができたのはよかったです。

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この地域の淡水魚でまず知っておいて欲しい2種。カワムツ(上)とオイカワ(下)。ざっと、カワムツは鰭が黄色く体側に藍色の縦条があり、オイカワは鰭が白く、鼻先が赤いです。まずはこの2種の区別から。

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カジカです。

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ドンコです。

ということで、も少し難しいのがこの2種。カジカとドンコ。カジカは上あごが出ており頭が丸い、ドンコは下あごが出ており頭が大きい。など。でも動きとか、雰囲気は、実はぜんぜん違います。

そんな研修も今年で11年目。こうした知識をもった行政職員が増えていくことで、生物多様性保全に関する施策をより適切な形で進めていけるのではないかと思っています。細かいことも重要ですけど、捕まえたのが楽しかったという思い出が残ってくれるのが一番重要です。そうなっているとよいのですが。。

そういえばこの中で「講師が捕まえた生き物を気持ち悪いと言ってはならない。観察会で子供に偏見を植え付けてはいけない!」という話をしていたのですが、観察会中にシマトビケラを捕獲した参加者の若い方が、「ウェ!・・って言ってはいけないんでしたね・・。うん、これはカッコいい、カッコいい・・」とつぶやいてくれていたのはうれしかったです。そうです!その心意気です!すべての生き物はカッコイイ。気持ち悪いというのは気のせいです。

日記

色々考えますと県外はるか遠くに出るのはなかなか厳しいなと思う一方で、閉じこもってばかりもいられません。ということで連休中は県内色々と。

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今日は観察会に行きました。珍しく?講師ではなく参加者として。面白かったです。こちらはアメリカザリガニ。言わずと知れた侵略的外来種ですが、そのカッコよさは否定しようもありません。しかし今日のこの場所では希少な水草を食べてしまうのでなんとかしないといけない感じです。

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そんなアメリカザリガニだらけの湿地帯でもたくさんいた在来の水生昆虫はたくさんいます。その一つがこちら、オモナガコミズムシです。

 

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午後はマリンワールド海の中道に行きました。某プロジェクトに関与しているので、その一環として私のほうで系統保存していた県内産希少水草3種類を寄贈してきました。こちらでも今後系統保存ができればと思います。

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もちろん展示もみます。小さな水生昆虫コーナーができていました!素晴らしいです。ミズカマキリとなっていたのはヒメミズカマキリでしたが、素晴らしいです!コガタノゲンゴロウを喜んでみているちびっこがいました。

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ケープペンギンです。個人的にこのコーナーのレイアウトは好きです。やはり水族館は良いですね。皆さんが楽しく水生生物を見てくれているのはうれしいです。

日記

今日は川で観察会でした。今年は某ウイルスの影響で例年実施していた観察会がほぼ絶滅状態でしたが、野外で少人数で、ちびっこも待望しているということで、ここでは開催しました。ちびっこたちは興奮していて、よかったです。

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カマツカです。本ブログの登場頻度が低下していてご心配をおかけしていたと思います。実際のところ私も数週間ぶりのカマツカで、かなり喜んでいました。やはりかっこいいです。

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イカワです。銀色ピカピカで美しいですね。

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ヤマトシマドジョウです。やはり最高の体型、そして模様です。

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世の中は土用の丑の日ということでウナギばかりですが、ウナギに負けるなカマツカキャンペーンということで、ちびっこたちにカマツカのすばらしさを布教してきました。浅い場所にカマツカを置き、それが砂と区別がつかないほどの保護色であることを堪能したり、砂に潜って隠れたりする様子を観察したりと、ちびっこの皆さんもカマツカの凄さを今回はじめて見知ったようでした。カマツカ君たちには苦労をかけましたが、無事に元の川にお戻りになられました。

日記

ストレスMAXポン氏と一緒に近所の川に行きました。ちょっと増水していたけど、安全に留意して注意深く。普段水がない浅い場所に水生昆虫やら魚類やらたくさんいて面白かったです。

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色々といました。

 

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ヒメゲンゴロウ(左)とハイイロゲンゴロウ(右)。ハイイロゲンゴロウはすぐに飛ぼうとします。

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スジボソハシリグモです。スジブトハシリグモと似ています。高速で水面を走り去っていきました。

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ナマズの幼魚。かわいいのです。獰猛だけど。生物多様性の恵みは遊べるので重要です。

 

日記

気づいたらブログ更新が滞っていました。ここ数週間、雨ばかり、災害ばかりで調査もできませんし、世の中はなかなか大変です。今日は雨もあまり降っておらず、調査に行きました。

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ということで某達人の方にご案内いただきました。素敵な湿地帯でした!!!

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珍しい水草がいくつか・・

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クロゲンゴロウです!久しぶりに見ました。大きくて絶妙なかっこよさです。

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アカハライモリです。幼生もたくさんいました。良いことです。

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ドジョウです。稚魚もたくさんいました。順調に繁殖しているようです。いつまでもこんな湿地帯であって欲しいですが、ここはもともとため池だった場所で、使われなくなって数年を経て、良い湿地帯になっているという状況と思われました。ということはこのまま遷移はどんどん進んでいくので、10年以内になんらか手入れをしないと、維持することは難しいでしょう。こうした山間の放棄されたため池は、現時点でよい湿地帯になっているところも多いのですが、それは一瞬のことです。生物多様性保全を考える上で、こうした環境をうまく維持・管理する仕組みが必要です。

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おまけ。目的地に行く途中の道でみかけたトノサマガエルです。かっこ、いい。しかし今日は大きなトノサマガエルをことごとく採り逃しました。切れ味がたりません。

書評

山田俊弘(2020)〈正義〉の生物学 トキやパンダを絶滅から守るべきか.講談社

www.kspub.co.jp

著者は植物生態学を専門にしている生物学者で、大学教員です。この本は、はじめにあるように、「生き物の保全は行うべきなのか?」「行うべきとすればその理由は何か?」という問いに対して、色々な観点から考察を行い、最終的に著者の考えに導いていくという構成になっています。考察の流れ、論拠は非常に明確でわかりやすいものでした。これは大学での講義の内容を基盤にしているからかもしれません。結論は、これはタイトルとも強く一致しますが、端的に言えば、生物多様性保全することは「正義」であるということです。正義とか言うと??となる方もいるかもしれませんが、どういう論理展開で「正義」なのか、これは実際に読み解いていくのが面白いと思います。

私は生物多様性保全する意義を説明する時に、「生物多様性は人類の役に立つから」「いつか人類の役に立つかもしれないから」で説明をとめることが多いのですが、この本ではその論は脆弱だと明確に述べています。生物多様性保全する意義は「その先」にある、ということを論じていて、個人的には非常に正しいと感じました。生物好きな人はここまで行って欲しいし、社会的にここまで到達できればとも思います。その前提を共有した中で落としどころを探っていけば、これ以上の絶滅は確かに、確実に、防ぐことができるだろうと思いました。

けれどもその一方で、行政や一般対象の生物多様性の研修などを担当している立場として、ここまで「行ける」人が果たしてどれほどいるのかという感情もあります。「生物多様性は役に立つから」「いつか役に立つかもしれないから」で、十分に腑に落ちるという人は多いのではないかとも思っています。付け加えるならば、「役に立つ」をどこに置くのかというところでしょうか。この本の中でも「役に立つ」ということについて、かわいいとかそういう点も「役に立つ」に含めていて、そうであれば、どんな生物にも必ず「感動」する人はいるだろうから、究極的には役に立たない生物はいない、ともいえるのではないかなと思います。

生物の絶滅、人類の進化、「社会ダーウィニズム」の誤用/悪用の歴史、バイオフィリアなどなど話題も広く、色々と勉強になります。参考文献も確実で充実しています。生物多様性保全に興味がある人にはぜひ一読してもらいたい内容と思いました。

 

余談ですが、インターネットの世界をみていて確信しているのですが、この世にはヒメドロムシやケシカタビロアメンボは言うに及ばす、寄生虫や細菌に至るまで、ありとあらゆる生物になにがしかのファンがいます。つまりそうした人たちにとっては、それらは存在するだけで十分に役に立っているわけです。したがって、あらゆる生物は役に立つor役に立つかもしれない、と考えてもそれほど無理はないのかなという気は、個人的にはしています。なぜ生物多様性保全する必要があるのか、非常に危機的な状況にある今、多くの人にまじめに考えて欲しい問題です。