オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

年度末進行で報告書作成ややり残した調査などを進めています。

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これは先週の調査にて採集したルリヨシノボリです。頬の瑠璃色斑点が美しいですね!

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これは今日の調査にて、ニホンアカガエル(上)とカスミサンショウウオ(下)です。造成後10年が経過した某湿地帯の調査ですが、毎年毎年多数確認できています。この湿地帯を造成しなかったらここはほぼ陸地だったので、これができた10年間にどれだけの個体数の両種をこの世に送り出せたのだろうかと思うと感慨深いです。もちろんこれらは造成後に放流したものではなく、周囲から自力でやってきて繁殖して増えたものです。適切な場があれば希少種も増えるという思いを強くした湿地帯でもあります。なるべく長く続いて欲しいけれども、果たして。。

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帰り道に少し干潟によって様子を観察。マサゴハゼがたくさんいました。小さくてかわいい顔です。

日記

STEAM教育教材「農業と生物多様性保全を両立するには?」が公開されました。私も少し協力しました。色々な専門家が色々な視点から解説していて、大人でも勉強になると思います。海城中学高等学校とWWFジャパンの共同制作です。全8コマで各コマに5つの5分動画という構成です。

www.steam-library.go.jp

 

STEAM教育とは何ぞや、ということですが、こちらが経済産業省によるSTEAM教育の解説↓

www.meti.go.jp

「STEAM」(Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(人文社会・芸術・デザイン)and Mathematics(数学))は2022年度から高校での新教科が開始し、小学校・中学校でもこうした視点での探究的教育が始まるそうです。ということで上のはそのための教材ということになります。

実は本教材は2019年にWWFジャパンが行っていた「田んぼと生きもの保全キャンペーン 失われる命の色」の続きでもあります。こちらも私は少々協力したのですが、とにかく、色々な観点から有明海側の水田水路地帯の価値を学んでもらい、生物多様性保全にも、セボシタビラやアリアケスジシマドジョウ保全にも、つながっていければと思っています。

www.wwf.or.jp

 

農業と生物多様性保全を両立、というのはもっとも難しい分野で、こうすれば簡単解決、なんてことはなくて、まずはどこにどういう問題があるかを共有して、科学的データを基盤にして、問題の解決に向けて色々な立場の人が、それぞれの立場の人の事情を汲みながら、考えていくことが必要です。

 

日記

今日は命の洗濯のため、休暇をとって湿地帯に調査に行ったのですが・・・

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完全に洗濯されました。海から遡上してきたイダ(ウグイ)です!!!あああああ!!!!!スゴイィィィ!!!!久しぶりに脳内の何かが全部出ました。投網1号は鎖ごとちぎれるし、水没するし、カマツカすら採れないしとぽんこつぶりを発揮していましたが、最後に投網2号はきちんと開き狙いの場所に飛んでいき、逃さず捕獲できてよかったです。

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改めて、ウグイPseudaspius hakonensis。こちらはたぶんメス。かなり大型で迫力があります。

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こちらはオス。ウグイは一生を淡水域で暮らす集団や、海に降りて成長し産卵のため遡上する集団や、そうした中でもなんかずっと淡水にいる個体や、ずっと汽水にいる個体などもいて、一筋縄ではいかない興味深い淡水魚です。今日見ることができたのは、海に降りて成長し産卵のため遡上する集団です。その動向が気になっていた個体群でしたが、まだ絶滅はしていないことが確認できてよかったです。このまま再生産を続けて欲しいと願っています。

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幼魚もいました。しかし幼魚はこの時期に川で何をしているのでしょうか???

日記

おそらく花粉の影響で、また気温も上下がはなはだしく、何やら体調がいまいちです。年度末進行でやることも多いです。ううう。息抜きにヤマトシマドジョウCobitis matsubaraeの画像を眺めます。ヤマトシマドジョウは山口県西部と九州、壱岐に分布する日本固有種です。

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体側斑紋L5が縦条模様の個体。ヤマトシマドジョウでは時々みられますが、この個体は尾鰭の模様もかなり変わっています。

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背部斑紋列L1が縦条模様の個体。このタイプはやや珍しいと思います。私もあまりみたことがありません。

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これはかなり斑紋が乱れた、というか美しい個体。いただきものですが、ここまでの斑紋変異個体はこれ以外に見たことがありません。

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これが標準的なヤマトシマドジョウ。背部斑紋列L1と体側斑紋列L5はともに点列模様になります。体側斑紋には変異があり、ここだけを基準に同定するのは難しいこともわかると思います。しかし安定した形質はどれも共通しています。一つは尾鰭基部の黒点が上下ともに明瞭なこと(この写真では見えませんが・・)、それから口髭がやや長く、特に第2口髭長が眼径をこえること、などを見ていくと同定できます。もちろんオス成魚では胸鰭の骨質盤形態や第1分枝軟条の太さなどをみることも重要です。

九州では同所的にスジシマドジョウ類が分布することもありますが、見比べるとヤマトシマドジョウはかなり”力強い”です。感覚的な印象で申し訳ありませんが・・

 

日記

昨日は調査でした。花粉にやられました。河原で転んで足を痛めました。老化しています。

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チュウガタスジシマドジョウCobitis striata striata。以前多産した場所が浚渫でしんでて泣きそうになりましたが、別のところを探したところまだいました。ちょっと状況が悪くなっているようで心配です。

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こちらは同じ場所にいた、ヤマトシマドジョウCobitis matsubaraeの縦条模様の個体。模様だけみるとチュウガタスジシマに似ていますが、口髭とか尾鰭基部の黒点とか、肝心の部分はきちんと違います。ただ・・ここの川のヤマトシマはちょっと変わっていると思う。何か秘密がありそうな。。

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そういう場所にはカマツカはしぬほどいるので、うれしいです。浚渫後のしんだような広々とした砂だけの場所にもしぬほどいるので、うれしいです。この川のカマツカは絶滅しなさそうです。しかしカマツカだけの川になってはいけません。

日記

依頼があって用意する機会があったので、せっかくなのでここにも貼っておきます。宮崎県のシマドジョウ属画像集。

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宮崎県というと大淀川水系から新種記載されたオオヨドシマドジョウCobitis sakahokoが有名?ですね。しかし宮崎県内のシマドジョウはすべてオオヨドシマドジョウというわけではありません。現在のところオオヨドシマドジョウは大淀川水系都城盆地を中心とした地域からのみみつかっており、都城盆地が他水系から切り離された古い時期に取り残されたヤマトシマドジョウが隔離され進化した種と考えられています(中島ほか,2011;Nakajima & Suzawa, 2016)。

 

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興味深いことには、大淀川水系の鹿児島県域の支流ではヤマトシマドジョウCobitis matsubaraeも発見されています(中島ほか,2019)。ヤマトシマドジョウとオオヨドシマドジョウはミトコンドリアDNAcytb領域の特徴からみるときわめて近縁で、同一水系に分布しているとは思っていませんでした。なぜ交雑しないのか、この2種の関係性はどうなっているのか、まだまだ調べる必要があると考えています。

 

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こちらは宮崎県門川町の五十鈴川水系のヤマトシマドジョウ。

 

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こちらは宮崎県西都市の一ツ瀬川水系のヤマトシマドジョウ。

 

参考文献

中島 淳・中村朋史・洲澤 譲(2011)宮崎県大淀川水系から得られた特異なシマドジョウ属.魚類学雑誌,58:153-160.

Nakajima, J., Suzawa, Y. (2016) Cobitis sakahoko, a new species of spined loach (Cypriniformes: Cobitidae) from southern Kyushu Island, Japan. Ichthyological Research, 63: 68-78.

中島 淳・橋口康之・杉尾 哲・東 貴志・越迫由香里・田口智也(2019)鹿児島県の大淀川水系支流におけるヤマトシマドジョウ(コイ目ドジョウ科)の記録.魚類学雑誌, 66:93-100.

日記

昨日は湿地帯調査でした。天気も良く気温も高く、風も強く、スギ花粉に完全にやられました。本当に勘弁してほしいです・・・

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調査そのものは8割ほど目的を達成できました。これはカマツカ。立派な良い個体です。

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オンガスジシマドジョウCobitis striata fuchigamiiです。久しぶりです。いつまでも絶滅しないでいて欲しいです。

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ヤマトシマドジョウCobitis matsubaraeです。こちらも、良い。

この2種はよく似ていますが、一番わかりやすい区別点は尾鰭付け根の黒点でしょうか。上1点がスジシマドジョウ、上下2点がヤマトシマドジョウです。尾鰭の縞模様も重要です。これは成長段階で数が増えるのですが、同サイズであればヤマトシマの方が2本は多いです。体の真ん中の模様はあまりあてになりません。あと模様の色調とか、口ひげの長さとか、諸々違う点が多々あります。一見似ていますが、まったく別の魚です。