オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

日記

今日は有明海湾奥部の某河口域において某魚の調査でした。某魚は2時間で2匹。とりあえず確認できてよかったです。

有明海湾奥部地域では実はわりあいに貴重なエコトーン。

ヤマノカミです。これから川を上っていく稚魚です。今日の目的ではなかったので、そのまま放流。無事に成魚になって欲しいものです。

スズキです。有明海湾奥部のスズキは遺伝的にも形態的にも固有性の高い独自の集団だそうです。別タクソンとして区別したらよいのにと思いますが、だめなんでしょうか。しかし久しぶりに見るとなんとも完成度が高くカッコいい魚であります。

日記

今日はちょっと遠出しました。佐賀県伊万里市です。観光。

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河童のミイラを見てきました。

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なぜかこれまでなかなか見る機会がなかったのです。ようやく見た実物に感動しました。ポン氏は衝撃を受けて終始無口でした。よかった。写真撮影は可能だそうですが、とりあえずそうそうネット上に出すものでもないと思いますので、隠しておきます。なお当地は酒蔵ですので、当然お酒も購入しました。また今度飲みます。楽しみです。

 

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この佐賀県の河童のミイラを初めて知ったのは、小学生の時に買ってもらったこの本「日本の妖怪 なぞとふしぎ」です。以来三十数年、いつも脳の片隅にあった河童のミイラでした。思っていたより実物は大きかったです。いつまでも残ってほしいミイラです。

佐賀県含む九州北部は河童の足跡が多く残る地域です。かつて河童が多産したその大湿地帯の面影はいまはだいぶ失われてしまいましたが、再び河童の雰囲気を感じる湿地帯を少しでも取り戻したいものです。 

 

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ドライブイン鳥 伊万里本店にも行きました。一年ぶりですが、やはり最高においしいです。

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特にチキンカツ!これ以上のものはなかなかないのでは?もちろん鳥めし、から揚げ、とりちゃんぽん、やき鳥、すべて最高なのですが。また来ます。

 

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日記

先日にK先生にもらった九州瀬戸内海側の干潟の生物を標本にしました。K先生は主に甲殻類を調べているのですが、現在福岡県レッドデータブック改訂中ということで、気になる干潟生物をとっておいてくれています。ありがとうございます。

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これはホシムシの仲間で、サメ肌なので、アンチラサメハダホシムシという生物に似ている気もするけど、ものの本によれば解剖しないとわからないらしいので私には同定できません。もしアンチラサメハダホシムシであれば、福岡県RDB2014では情報不足になっています。

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同所にいたということで同封されていたこれは、イソギンチャクの一種と思われるけれども、干潟性ということからしてイシワケイソギンチャクの仲間なのだろうか・・うーむ・・。ものの本によれば近縁な未記載種もいるとか書いてあるので、私には同定できません。福岡県RDB2014には干潟性のハナワケイソギンチャクという種が準絶滅危惧で入っています。ただ、それは有明海特産種と書かれているので、この種とは別の種なのでしょう。

 

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そして同所にいたというこれはアゲマキに見えるけれども、ものの本によれば瀬戸内海側では消滅したとあります。けど、九州の瀬戸内側の干潟にはいるもの?福岡県RDB2014では絶滅危惧IA類となっています。

こういうのはやはり知識の一番外側を知っていないと、わからないこともわからないのです。でも調べるのは楽しいです。君も湿地帯戦士にならないか?調べることはたくさんあるぞ!

日記

昨日から今日にかけて、裏庭に新しい湿地帯をつくる作業をしました。

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今回はコンテナを埋めてお手軽につくるタイプです。コンテナビオトープです。

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これは初代コンテナビオトープ。自宅の横側にあります。水際の処理がいまいち気に入っておりません。

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そこで初代コンテナビオトープからイグサを半分ほどとってきました。これをベースにします。ちなみに私の家で栽培しているこのイグサはただのイグサではなく、福岡県が開発した「筑後みどり」という品種で、畳表用の高品質なイグサです。10数年前の職員研修において、私は福岡県農林業総合試験場筑後分場でのイグサ研修を選択し、その時に担当の職員の方からわけてもらったものをずっと栽培していたのでした。高品質に育てる方法が農研機構のHPに書いてありました→ リンク

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余談でした。イグサは湿っていれば陸上でも育ちますので、水際から陸域へのエコトーンの造成に適しています。高品質畳表品種「筑後みどり」ですが、普通に栽培すると普通のイグサと同じように育つので、このように上に乗せつつ水中に根がいくような感じで設置します。

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コンテナの縁には、表の湿地帯ビオトープからもってきたコケ類やミズユキノシタなどが含まれた土を張り付けていきます。それからもう一つエコトーンが欲しいので、植木鉢と石を組み合わせてちょっと段をつくり、そこになだらかになるように土を載せていきます。ここには庭で栽培しているナンゴクデンジソウを植え付けました。

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一通りできました。これから水をいれていきます。

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水を入れたところです。初代コンテナビオトープよりもかなり水際の処理が良い感じです。とにかくエコトーン!エコトーンが大事なのです。

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正面から。水中にはこれまた表の湿地帯ビオトープで栽培しているジュンサイトチカガミを投入しました。今後、夏に向かっての変化を楽しみたいと思います。湿地帯!湿地帯!

 

盛り上がったので、生物多様性保全に寄与する湿地ビオトープについて私見を書いてみます。どういうのが良いのか、何がだめなのか、ということをしばしば聞かれるのですが、一概にどうというよりはいくつかのパターンがあり、そのビオトープがそれぞれどれに合致しているのかというところから方針を決めていくと、生物多様性保全に寄与する間違いのない湿地ビオトープがつくれます。大まかには以下の考え方に基づいていくべきだろうと思っています。

 

〇 絶対にすべきではないこと

特定外来生物の飼育・栽培をしない、ということがまず挙げられます。水草類には特定外来生物が多く、しかもわりとその辺に生えているので(オオフサモ、ナガエツルノゲイトウ、ブラジルチドメグサなど)、こうしたものを湿地ビオトープに植えないよう注意が必要です。これらの栽培は犯罪です。

 

〇 閉鎖的で流れ出ない湿地ビオトープ

そこで増えても野外へ出ていかない構造であれば、自由に楽しんで良いと思います。外来種であっても侵略性が低いものであれば、そこにいれることに問題はないでしょう。そうした場があれば水生昆虫類などは勝手にやってきて増えたりもしますし、場合によっては両生類が産卵に来るなど、その場があることで生物多様性保全に寄与します。あるいは希少種の系統保存などを狙って、そうしたものを専門家や愛好家からわけてもらって、飼育・栽培とかするのも楽しいしやりがいもあって良いかもしれません。

 

〇 日常的に流れ出る湿地ビオトープ

そこで増えて、流出して、野外へ出ていくような構造では、外来種は飼育・栽培すべきではありません。在来種であっても遺伝的攪乱を招く場合があり、特に遠方から持ち込むことはよろしくありません。こういうビオトープでは場のみ造成して、「自然にやってくる生物だけでそのビオトープが構成されることを目指す」のが一番良いです。本当に、ただ場があるだけで、生物多様性保全には確実につながるものです。しかしながらもっと攻めたい、という場合は同一水系産のものを持ち込むことは一般的に遺伝的攪乱を招くことはなく問題が少ないです。分類群によっては平野を共有する水系であれば、同一の遺伝的集団ということもあります。このあたりは種の特性によって異なりますが、ようするに遺伝的攪乱を招かないのであれば、いれても問題が少ないということです。ただしドジョウのように、よく似た外来種が増えているような湿地帯生物もいるので(リンク)、そういう場合は遺伝的に問題がないことを確認した上でいれるべきでしょう。持ち込む土なども、大量にある場合には、やはりなるべく近郊地の同一水系内からもってくることが基本となります。

その他、細かいことを言うと色々とありますが、まずは上記の知識は生物多様性保全に寄与する湿地ビオトープをつくる上で重要です。

日記

新年度です。それとは関係なく昨日は湿地帯に行きました。

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近年、色々と湿地帯生物の採集や調査をしているKAMEI君に、とある巻貝の生息地を案内してもらいました。KAMEI君は巻貝にも詳しいのです。見るからに良好な湿地帯(休耕田)!

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ということでこれが目的の淡水巻貝。ヒメヒラマキミズマイマイと思われるものです。これで成体です。小さいですが、マルヒメツヤドロムシよりは大きいです。たいへん勉強になりました。どうもありがとうございました!

日記

出身研究室の某先生から、河口干潟で調査中に得られたという大きなヒルの情報を得たので、今日受け取ってきました。

確かに大きい!10センチ以上あります。私はこんなの見たことがありませんでした。

触るとふにふにしていてやわらかいです。で、手元の図鑑とか見てもよくわからなかったので某SNSでお尋ねしたところ、20分ほどでご教示いただきました。SNSすごい!そしてありがとうございます!

ということでその名はヒダビルLimnotrachelobdella okae(Moore, 1924)という生物でした。色々な魚類に外部寄生し、しかもそれらが淡水に侵入しても平気(海水でも淡水でも死なない!)という驚異のヒルでした。色々と納得です。こちらの文献「長澤ほか(2013)100年ぶりにボラに寄生が確認されたヒダビル」に詳しく書いてあって勉強になります↓

100年ぶりにボラに寄生が確認されたヒダビル - 生物圏科学 : 広島大学大学院生物圏科学研究科紀要 52巻 - 学内刊行物 - 広島大学 学術情報リポジトリ

日記

年度末の混乱のさなか、延期していた東方への出張を決めてきました。

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福島県猪苗代町にある水族館・アクアマリンいなわしろカワセミ水族館です!ついに行くことができました。

f:id:OIKAWAMARU:20220327172453j:plainユーラシアカワウソやカワセミサンショウウオ類、東日本の淡水魚類など色々と目玉はありますが、個人的にはなんといっても水生昆虫の展示です。この狂気の展示空間をついに見ることができました。大変すばらしいです。必見です。今年度から業務として希少水生昆虫類の系統保存なども取り組んでいるので、そのあたりの参考になるお話を色々と聞かせていただきました。

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さて、せっかくここまで来たのであれば、湿地帯にも行きます。猪苗代湖です。

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狙いの水生昆虫はいくつかあったのですが、いずれも水中にいません。しかしあきらめる私ではありません。このように水際の陸地を掘ったり、あるいはあれこれしたりして、いくつか水生昆虫を採集することができました。

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まずはこちら、昨年に新種記載されたバンダイホソガムシHydrochus mitamurai Hirasawa & Yoshitomi, 2021です!水位が下がり雪が積もる中、気合で陸上から採集しました!!上翅会合部後端が切り欠き状になっているのは大きな特徴です。体長約2.7mm。良いです。。

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それからこちらはエサキナガレカタビロアメンボPseudovelia esakii Miyamoto, 1959。産地での個体数は多い!と自分で図鑑に書いていますが、実は冬には水域にはぜんぜんいないことを身をもって知りました。こちらも水位が下がり雪が積もる中、気合で陸上から採集しました!!体長約2.5mm。良い。。

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そしてオオヒラタガムシEnochrus haroldi (Sharp, 1884)と思われますが、このグループも色々と闇が深い・・・。九州では鹿児島県からのみ記録がありますが、基本的に本州の近畿地方以北から知られます。気合で陸上から採集しました。

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同所にいたコヒラタガムシEnochrus vilis(Sharp, 1884)。このグループも闇が深いのですが、この種についてはおそらく問題ないはず。。しかし九州にいない北方系ヒラタガムシもカッコいいですね。気合で陸上から採集しました。

ということで今回の視察&採集においては、H澤さんに大変お世話になりました。お忙しいところありがとうございました!

次は暖かい時期に行って、数万匹ともいわれるエサキナガレカタビロアメンボの大群を見てみたいです。今回、陸地から掘り出すことができたのはわずかに3個体でした。