オイカワ丸の湿地帯中毒

湿地帯中毒患者 オイカワ丸の日記です。

新年

遅くなりましたが2024年も湿地帯中毒は続きます。今年もよろしくお願いします。

今日はようやく湿地帯初めに行ってきました。調査です。しかし昔は1月1日は必ず湿地帯に行っていたのに、これが老いというものでしょうか。残念です。

さて、今回は昨年に某筋肉湿地帯隊長から情報いただいた(ありがとう!)某湿地帯生物がみつかったという某湿地帯をようやく訪問しました。詳細情報はありませんでしたが、まあだいたいのあたりで、おそらくここという場所に行きつきました。ところが水がありません!しかしながら雪の積もった猪苗代湖岸からエサキナガレカタビロアメンボを掘り出したこの私(リンク)にとっては無問題です。秘儀を使い無事に某湿地帯生物を確認しました。うむ。

今年も湿地帯活動をがんばっていきたいと思います。

 

日記

ということで2023年最後の更新となります。今年も一年間どうもありがとうございました。

2023年最大の出来事はやはり「自宅で湿地帯ビオトープ生物多様性を守る水辺づくり(大和書房)」の出版でした。同じくビオトープを趣味とする漫画家の大童澄瞳先生に表紙ほか描いていただき、生物多様性とは何か?生物多様性を守るビオトープとは何か?湿地帯の魅力とは?というところについて、これまで届けることができなかった人々に届けることができたのではないかと思います。本を読んで自宅で湿地帯ビオトープをはじめたという方も多くいたようです。うれしいです。

ということで関連して書いたブログ記事を以下にまとめます。

まずは出版時の↓

oikawamaru.hatenablog.com

それから、蚊の問題についての補足↓

oikawamaru.hatenablog.com

それから岸部の構造についての補足↓

oikawamaru.hatenablog.com

そもそもの発端は趣味の庭の湿地帯づくりを紹介したこの記事でした↓

oikawamaru.hatenablog.com

面白そう~~と思った方はぜひとも、来年は自宅に湿地帯ビオトープを作ってみて下さい。その際にそのビオトープ生物多様性の破壊につながってはいけません。生物多様性の破壊につながらないビオトープとは何か?その知識が「自宅で湿地帯ビオトープ生物多様性を守る水辺づくり」に書かれています。そう難しいことではありません。いくつかの知識があれば簡単です。機会があればぜひ読んで、挑戦してみて下さい。

www.daiwashobo.co.jp

で、あまり進まなかった研究の方ですが、それでも共同研究はいくつも面白いものを発表することができました。その中で最大の成果は、新種ナギサミズカメムシNagisavelia hikarui Watanabe, Nakajima & Hayashi, 2023の発表でしょうか。発見者のNAGANOさん、そして超人的に研究を主導していただいたWATANABEさんのおかげであることは言うまでもありません。ありがとうございました。本種のタイプ産地は福岡市です。身近な環境にまだまだ未知の湿地帯生物が暮らしていること、そして身近な環境を守ることの大切さを多くの人に知ってもらうきっかけになればうれしいです。

oikawamaru.hatenablog.com

湿地帯中毒はまだ続きます。引き続きよろしくお願いいたします。

 

日記

12月締め切りの原稿が多すぎて泣きそうです。助けて・・。そんな中、今日は湿地帯に調査へ。たぶん今年最後の湿地帯。大きなカムルチーが獲れました。

しかし今日は結局目的の魚が採れませんでした。あんなにいたのに信じられない。風景は十数年変わらないのに。こうして一種消え、二種消え・・そのままでは我々が消えてしまうかもしれないのでがんばって生物多様性保全をしようと思います。できることから、コツコツと。

 

などということを考えていたらいきなりアリアケヒメシラウオが採れて驚きました。持ち帰って撮影した写真。なお本種は種の保存法に基づき無許可での採捕が禁止されています。九州地方環境事務所からの許可取得済みです。

ちなみに私はアリアケヒメシラウオ種の保存法指定は反対派です。指定後の保全対策がまったくなされていないし、モニタリングもされていません。なのでせめて自分が採った時は記録を残せるようにと思うと毎年採捕許可申請をしないといけないし、その手続きも大変だからです。例えば指定することで水路改修や河川改修で高度な配慮をする根拠になったり、乱獲からの売買を防ぐことになったりして、保全に直結する種も確かにいます。でもアリアケヒメシラウオはほんと??です。本種は飼育はまず不可能なので観賞用に乱獲・売買されることがありません。そもそも広大な筑後川河口に広く薄くいるので、乱獲も困難です。従って採集禁止が主となる指定のメリットが見えません。また、本種は年魚であることから、いきなりいなくなることやいきなり増えることなども想定されますが、採集禁止、だとそういう情報が得られません。断片的でも生息情報をずっと拾い続けられるような形が保全につながります。

アリアケヒメシラウオは地球上で有明海湾奥部の汽水域にのみ分布する日本固有種です。危機的状況ですが、絶滅させてはいけません。本種の保全のためには、種の保存法に指定してただ採捕禁止するのではなく、現在判明している産卵場の保全、それから産卵場となり得る砂礫底環境の再生、ヨシ原を伴うエコトーン帯の再生を積極的に進めていくことがもっとも必要です。

日記

先日は仕事で中国・上海市あたりに出張でした。ちょうど14年前でしょうか、上海近郊に魚類調査に行きました。それ以来の中国です。縁がある地域です。色々と勉強になり、楽しかったです。ということで食べた魚を少し紹介。

こちら白水魚(カワヒラ:Chanodichthys erythropterus)の蒸し物。料理名は清蒸白水魚で良いのかな?14年前に中国に行った時も食べましたが、やはり好きな味。いつでも食べたいです。

 

それからこちらは14年前に行った時には食べる機会がなかった魚。鮰魚(イノシシギギ:Tachysurus dumerili)の煮つけ的な(料理名はなんていうのかな)。肉がほろほろしていて大変おいしかったです。また食べたいです。

日記

今日は一日、とある調査にて各地の川を回っていました。

こちらは典型的な都市河川。何か生物多様性がもう少しでも高まる工夫はできないものかと考えます。生き物はまだ暮らしています。

 

こちらは改修工事中の土手にて見かけた引き抜かれて立てかけられていた看板。ゴミを捨てるのは確かに生き物にやさしくないけれど、この川はゴミが多かった頃よりも生き物にやさしくない状況でした。ほんとうに生き物にやさしい川に、もっとしていかないといけないと、私は思っています。

日記

今日は湿地帯に調査。県内のとある渓流。ついでにヒコサンミジンニナを採集してきました。

何度も見たことはあるのですが、やはり知識がつくとありがたみが増す・・・。勉強が必要。殻長約1.8mm。

ちなみに近縁種にホラアナミジンニナという種がいて、この種と本種を同種にするか別タクソンにするかは議論の最中ということだそうです。ホラアナミジンニナと比較した上で記載された見解を尊重して(あと福岡推しとして)、ここではとりあえずヒコサンミジンニナとします。

しかし薄暗い渓流で肉眼で1.8ミリの巻貝は厳しかったです。なんとか目視でみつけることができたけど、眼が老化しています。もっと若い時に取り組んでいたら!と一瞬後悔したものの、若い時は小さなヒメドロムシに取り組んでいてあれ以上はできなかったので、あれ以上はできなかったな、と納得したのでした。

 

ヒコサンミジンニナの原記載は以下から見ることができます↓

www.jstage.jst.go.jpこれを読むと、ホラアナミジンニナやアキヨシホラアナミジンニナとは、本種の方がより大きいこと(他種は1.6mm以下)、螺層が殻頂に向かって一層細くなること、螺層が完全に4階を数えることができること、などで区別できるとしています。

日記

ここ数日はヒルについて勉強していました。福岡県レッドデータブック改定作業に伴うお勉強です。ヒルと言えば血を吸う生物という印象が強いですが、人類から積極的に吸血するヒルはかなりの少数派で、福岡県内では水生のチスイビルと陸生のニホンヤマビルの2種が代表的です。しかしながら、いずれの種も現在の福岡県内ではほとんど見かけることはありません。

チスイビルは2023年現在、私が調べた限りでは県東部(豊前地域)に3ヶ所の生息地を確認しているのみです。その他、県北部、県南部で最近も見たという情報はあるのですが、確認できていません。かつては各地に普通にいて、水田に入った際に血を吸われたという経験のある人は多いことから、人知れず絶滅に瀕している可能性があります。ウマビルやセスジビルなど、模様のある大型のヒルと混同されていることもあり(これらの種類は血を吸いません)、今後きちんと調べていく必要があるでしょう。

ということで福岡県産のチスイビル(とコシマゲンゴロウ)です。現在私が確認している県内のチスイビルの生息地は、環境が良好なため池(2ヶ所)と水田(1ヶ所)です。背面に5条の縦条模様があること、腹部に黒斑模様がないこと、などで近縁他種と区別できます(あと、血を吸いに泳いでやってくるのも大きな特徴です)。

 

もう一方のニホンヤマビルですが、こちらは最近本州や九州南部などでは増えており問題化している地域もある陸生の吸血ヒルです。ところが福岡県では長らく確実な情報がありません。こちらの文献↓

www.jstage.jst.go.jpによれば沖ノ島英彦山での記録があるようですが、特に英彦山では明治22年(1889年)に英彦山で採集された標本が東大に残っているものの、1946年以降に絶滅した可能性が示唆されています。私も英彦山は何度か調査に行ったことがありますが、見たことがありません。

 

今回の福岡県レッドデータブックについて、専門の淡水魚類の一部(魚類分科会)とトンボ以外の水生昆虫類(昆虫類分科会)については前回に続いて委員として担当しているのですが、加えて、一部の淡水性貝類(貝類分科会)、一部の水生無脊椎動物甲殻類その他分科会)、さらに陸生の無脊椎系動物(クモ形類その他分科会)も担当することになり(人材不足!)、大変です。県レッドは10年ごと改訂なので、10年後は若い人たちに任せていきたいです。レッドデータブックを見て、これは調べてみたいなあ、と思うような内容になると良いのですが。生物多様性保全を効果的に進めていく上で、生物各種の生息状況の変化や分布実態を把握していくことは、基礎的データとしてきわめて重要です。